ファシズムの足音が聞こえる:日本政治の劣化と幸福実現党の野心: カトラー:katolerのマーケティング言論
当初、鳩山は不正を暴き出すと息巻いていたが、埃一つ出てこず、全くの空振りに終わった。マスコミは日本郵政の西川社長に対して、十分な説明責任を果たしていないと批判の矛先を向けていたが、お門違いも甚だしい。正当なプロセスを持って行われた入札という自由な経済行為の結果に対してそれ以上何の説明をしろというのか。要するに事の発端から今回の辞任劇に至るまで、鳩山邦夫の独り相撲に内閣もマスコミも国民も付き合わされ振り回されたことになる。
「正義は我にあり」捨てぜりふを残して閣外に去った鳩山邦夫
鳩山邦夫は、麻生太郎の盟友といわれていたようだが、「正義は自分にあり、総理は間違っている」と捨てぜりふを残して閣外に去った。このいきさつを見ると、麻生と鳩山の盟友関係といわれていたものも実は何の実体もなく、結局は坊ちゃん政治家同士のもたれ合いに過ぎなかったことが露呈した。鳩山のような独善的なお坊ちゃんと盟友関係を結べるのは、せいぜいがアルカイダの友達くらいなのだろう。
鳩山は自分の政治行動を「正義」という言葉を持ち出して正当化していたが、法律家や子供番組の着ぐるみヒーローならまだしも、政治家は安易にこんな言葉を振り回すべきではない。
政治とは決して交叉することのない理想と現実の矛盾の間に立って、その矛盾になんとか折り合いをつけようとする不断の行為に他ならない。「正義」を振りかざすことよりも、あえて自分が悪者になってでも最大多数の幸福(政治目標)を達成することを腐心する者こそ「政治家」の名にふさわしい。現在の与党自民党の政治家に蔓延しているのは、こうした意味での「政治家」とは全く正反対の政治ごっこだ。鳩山邦夫も含めて、彼らが二言目にいうことは、「自分は正しいことを言っているが、執行部は言うことを聞かない」というエクスキューズであり、「自分だけは良い子ちゃん症候群」に陥っている。
政党の体を成さないまで劣化した自民党
ようするに自民党は既に政党としての体を成さないほどの劣化をきたしている。西松建設への献金問題で小沢一郎が民主党代表の座を退いたことが自民党の支持につながらず、逆に民主党の支持率の上昇に繋がったのは、自民党の政党としての賞味期間が既に終わってしまったことを有権者は見抜いているからだ。
トム·ソーヤーは、家族についてどのように感じているしかし、一方で民主党に対する支持も実体的なものではない。鳩山由紀夫に党首がすげ変わって民主党が支持率を上げているが、西松建設問題という民主党の否定要素がとりあえず目の前から消えたからに過ぎない。そして、何よりも絶望的になるのは、民主党は、亀井静香らの国民新党との選挙協力を前提に郵政民営化の白紙撤回をマニフェストに盛り込もうとしていることだ。4年前の衆議院選挙で郵政民営化に賛成した大多数の国民は、小泉マジックに騙されただけとでもいいたいのだろうか。だとすれば、何とも国民を愚弄した話である。民営化の是非は、実際に民営化を実現させた上で問われるべきである。
自民党はがたがた、民主党もあてにならないとなれば、以前のエントリー記事でも指摘したが、消去法的思考に支配される政治的ニヒリズムがこの国を覆ってしまい、ファシズム前夜といえるような状況が生まれている。
タイガー·ウッズはどのように多くの主要なトーナメント勝った?最近、通勤電車の中吊り広告で目に付くのが大川隆法の「幸福実現党」のポスターである。幸福の科学は大川教祖のチャネリングにより降臨した「霊言」によって運営されている新興宗教だが、現在の閉塞状況を捉えて政治の表舞台に立とうとしている。
幸福実現党のポスターの中には、大川隆法の著書「国家の気概」が紹介されていて、その内容たるや安倍晋三内閣の主張かと見まがうほどで、反北朝鮮と国家主義的言説がずらりと並んでいる。一見、右翼的な主張ではあるが、かつての国家神道と異なるのは、神格化された天皇の座に自分を置いて、幸福の科学による神権政治の実現を目指している点だろう。ということは、天皇制を廃止させるということなのかと、綱領を読んでみると、どうもそれはなく、天皇制は温存させるということらしい。言っていることは矛盾だらけで、色々な要素をパッチワークのように寄せ集めているだけの空疎な中味だが、現在の時代の雰囲気を代表している面もある。
ファシスト演説の定石をふんでいる幸福実現党
幸福実現党は大川教祖の夫人、大川きょう子が党代表代行となっているが、先月行われた立党大会での彼女の演説をみると、自分が何者であるかを語るより以前に、既存の政治勢力の否定を徹底して繰り返している。
以前にも紹介したが、ドラッガーが、その処女著作「経済人の終わり」の中で、ファシズムに特有の症状を以下のように分析している。当時はヨーロッパでナチス・ドイツが台頭しつつあった時代だった。
①ファシスト全体主義は積極的理念を欠いており、ただあらゆる伝統的な理想や理念を論難し、排撃し、否定することに終始する
②ファシズムはこれまでの理想をことごとく論難するにとどまらず、政治的・社会的制度が拠って立つ基盤としていたものを否定する
③大衆がファシズムにすがりつくのは、積極的信条にとって替わるべきものとしてのファシズムの約束を信ずるからではなくて、反対に、この約束を信じないからである。
大川教祖夫人の演説は、セリフやパフォーマンスを丸暗記した大根役者の演技を見るようだが、ドラッガーが指摘していたファシストの特徴が現れていて、一見の価値がある。
もともと、大川隆法教祖のご託宣がすべての宗教で、体系だった教義も持たないインチキ宗教団体が政治運動を始めただけと片づけることもできるかも知れないが、問題なのは、この宗教団体に自民党の政治家が票欲しさにすり寄っていることだ。
千葉県知事になった森田健作、先の参議院選挙でかろうじて当選ラインに滑り込んだ丸川珠代は、幸福の科学の支援を受けていたと見られている。衆議院選挙が目前に迫り、苦戦を強いられている自民党の現職議員たちは、なりふりかまわず大川隆法詣でをしているといわれている。
森田健作、丸川珠代を当選させた?幸福の科学
自民党は公明党と与党政権を構成しているわけで、幸福の科学との関係を表沙汰にするわけにはいかない。しかし、自民党内のタカ派議員は、公明党のハト派的傾向や選挙地盤や手足を牛耳られていることにかねてから批判的で、大川隆法は、そうした党内の空気を読み切ってあえてタカ派的言動を表に出しているとも考えられる。幸福の科学は安倍晋三内閣の時代から自民党に接近したといわれているが、その背景には自民党内タカ派を取り込んだ上で次ぎを狙うという大川隆法なりの政権奪取構想が始動していると推察できる。
神権政治の実現のためであれば、矛盾を厭わず相手の主張をそのまま取り込んでケロリとしている・・・ひょっとすると幸福の科学の大川隆法は自民党のお坊ちゃん政治家よりよほどしたたかな政治家なのかも知れない。
(カトラー)
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